研究実績の概要 |
本年度、私はベンジルアルコールのベンジル位C-H不斉アリール化反応の検討を行った。初期段階では、水素原子移動(HAT)部位としてベンジルチオールを有する触媒を用いて種々の検討を行ったが、目的物は低収率であった。この理由として、HATが効率的に進行していないのではないかと考えた。そこで、目的物の収率向上を目指し触媒内HAT部位のスクリーニングを行った。種々のチオールおよびその誘導体を検討した結果、チオカルボン酸を用いた時、高収率で目的のビアリールメタノールを合成する事に成功した。このスクリーニングの結果から、チオカルボン酸をHAT官能基として不斉触媒に導入する事とした。 続いて、選択性の向上を目的としてビナフチル骨格の3,3'位の置換基効果の確認を行った。Ph基を用いた時、立体選択性は20%eeであったのに対して、2,6-ジフェニルフェニル基などの、より嵩高い置換基を導入した場合、反応は進行しなかった。嵩高い置換基は反応場を阻害すると考えている。現在は基質・求電子剤と二次的に相互作用しうる官能基の導入することで基質、および求電子剤を捕捉する検討を行っている。 一方で、ベンジルアルコールの他にベンジルアミンに対して反応の試みたところ、極めて温和な反応条件にて目的の1,1-ビアリールアミンを高収率で得る事に成功した。本反応は様々なアミン基質に対して適用可能であり、クロピドグレルやドネペジルなどの医薬品を用いた場合でも目的物を良好な収率で得る事ができている。この結果を基にアミンを有する多くの強力な生物活性化合物に対しても本反応の適用を検討する。
|