胆道閉鎖症患者由来乳歯幹細胞(BA-SHED)における胆管上皮細胞分化能の解析のために、マトリゲルを用いた三次元培養法を取り入れた分化誘導を行い、色素取り込みを伴う胆管上皮細胞様細胞による管状構造の形成に成功した。特異的なケラチンタンパク質であるCK19の遺伝子発現は誘導終了時に低下していたが、免疫蛍光染色にてタンパク質の局在が認められた。 これまでの研究で、BA-SHEDにおけるHNF6の過剰発現を明らかにした。さらに、健常SHEDと比較して、BA-SHEDのHNF6プロモータ領域におけるクロマチンアクセシビリティ上昇を明らかにした。また、健常SHEDをTNF-alphaおよびIFN-gammaにて共刺激すると、BA-SHEDと同様のクロマチンアクセシビリティを示すことを明らかにした。これらの結果から、炎症性の刺激によりBA-SHEDのHNF6発現に対する病的なエピジェネティック制御が生じている可能性が示唆される。加えて、BA-SHEDでは、胆道上皮細胞の分化において重要であるTGFBR2の遺伝子発現が低下していることを明らかにした。TGFBR2の発現はHNF6により制御されることが知られており、BA-SHEDにおいてHNF6発現上昇がTGFBR2の発現を制御している可能性がある。また疾患モデルとして、CRISPR-dCas9システムを用いてHNF6遺伝子を過剰発現させた健常SHEDの作成に成功した。 さらに、BA-SHEDの正常化とその解析を行った。プレドニゾロン処理による炎症性のシグナル阻害では、BA-SHEDの正常化は認められなかった。一方、siRNAにより、BA-SHEDのHNF6遺伝子発現を抑制し、HNF6タンパク発現の抑制を確認した。従って、siRNAによるHNF6発現抑制によるBA-SHEDの正常化が有効であると考えられる。
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