研究課題
特別研究員奨励費
多くの疫学研究から、妊娠期における母体免疫活性化(例えば、ウイルス感染、過度なストレス、栄養低下による免疫系異常)が、生まれてくる子供の発達障害(自閉症、統合失調症など)の発症リスクを高めることが報告されている。このような背景から、これらの動物モデルの作成において、妊娠マウスに合成二重査鎖RNAアナログでToll-like 受容体リガンドであるpoly(I:C)が使用されている。すなわち、妊娠マウスにpoly(I:C)を投与すると、生まれてくる仔マウスが自閉症様行動異常や統合失調症様高度異常を示すことが知られている。今回、このモデルで生まれた仔マウス(4週齢時)の前頭皮質における可溶性エポキシド加水分解酵素のタンパク発現が増加していることを見出した。興味深い事に、統合失調症患者由来のiPS細胞から分化した神経細胞や自閉症患者の死後脳において、この酵素の遺伝子発現が高いことを見出した。興味深い事に、この酵素阻害薬を思春期(4週齢)から4週間、飲料水として与えると、成人期(10週齢以降)の行動異常が抑制された。さらに、妊娠期から離乳時期まで、同様に飲料水として与えると、生まれた仔マウウsの行動異常を抑制した。以上の結果より、母体活性化によって生まれた仔マウスの発達障害の病因に、可溶性エポキシド加水分解酵素の増加が関与していることを発見し、この酵素阻害薬が予防薬として有用であることを見出した。この研究成果は、2019年4月に米国科学アカデミー紀要に掲載された。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Proceedings of the National Academy of Sciences
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