ブラインド量子計算や量子超越性に関する研究を行った。ブラインド量子計算とは、量子コンピュータを持たないクライアントが量子コンピュータを所持するサーバに量子計算を安全に委託することを可能にする方法である。また、量子超越性とは量子コンピュータの古典コンピュータ(従来のコンピュータ)に対する優位性のことである。交付申請書の研究目的では、エラー耐性が高くかつクライアントへの要求がより少ない実用的なブラインド量子計算の提案を掲げていた。以下で、実際に得られた成果について説明する。 まず始めに、クライアントに必要な量子操作を2種類の測定だけにすることに成功した。これにより、ある種のエラー訂正手法をブラインド量子計算に応用することが可能になり量子通信路の雑音に対して耐性を持たせることにも成功した。これは、無条件に安全な量子クラウドコンピューティングの実現に向けた重要な一歩である。一方、同様の目標を達成するために異なるアプローチも模索した。ブラインド量子計算には2つのタイプがあり、本アプローチによって、上記とは異なるタイプのブラインド量子計算におけるクライアントへの要求も少なくすることが出来た。 さらに、上記の結果を改良することで、量子超越性を有する量子回路の検証方法を提案することが出来た。量子超越性は様々な企業や大学が実証を目指している重要な研究テーマであり、本成果はその実証において大きな役割を果たす可能性を有している。 上記で述べたプロトコルには、クライアントが量子状態の測定を行っているという共通の性質がある。クライアントの操作をさらに減らすためには、測定さえも不必要にしなければならない。そこで、測定を行わずに委託出来る問題を提案し、さらにその問題を一般化すれば量子コンピュータが解ける最も難しい問題になることを示した。 その他、ブラインド量子計算以外の量子暗号に関する研究なども行った。
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