研究実績の概要 |
本研究では、生体内の環境変化に応答する多機能分子プローブの開発と病的組織のイメージングを目的に実験を行っている。令和元年度では、平成30年度にオーストリア・ウィーン大学のFreddy Kleitz研究室にて合成・評価を行った種々の粒径を有する多孔性シリカナノ粒子MCM-41, MCM-48に、表面に水分散性を高めるためのホスホネート基、内部にルテニウム錯体を固定化するためのチオール基をそれぞれ別に修飾した。この2種類の官能基を有する多孔性シリカナノ粒子pMSN-SHは、表面のホスホネート基によって表面電位が著しく負に帯電しており、3-4 nmの細孔を有していた。また、内部表面のチオール基とマレイミド基を有するルテニウム錯体とのマイケル付加反応によって固定化し、pMSN-Ruを合成した。種々のpMSN-Ruの分散液に種々の酸素濃度の大気を通気したところ、Stern-Volmer式に則った高い酸素濃度応答性を有していた。この種々のpMSN-Ruを細胞に投与したところ、100 nmの粒径を有するMCM-41, MCM-48タイプのpMSN-Ruは細胞内に良好に取り込まれ、外部の酸素濃度変化に応答した素早い発光強度の変化が見られ、光照射による細胞毒性も見られなかった。一方で、50-60 nmの粒径を有するMCM-48タイプのpMSN-Ruでは細胞内への取込量が少ないという結果が得られた。したがって、100 nmのpMSN-Ruを用いて、動物体内での酸素濃度応答性評価を行った。マウス下肢にプローブを投与し、上部を結紮することによって急性の低酸素状態を作り、その前後での発光をイメージングした結果、結紮後により強く発光することが観察され、生体内においても高い酸素濃度変動に対する応答性を示すことを明らかにした。現在、本研究内容に関する論文を投稿する準備中である。
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