研究実績の概要 |
1.Euler-Laplace積分表示と交点理論:Euler型積分表示とLaplace型積分表示の補間に当たる積分表示として以前申請者が導入したEuler-Laplace型積分表示がある。この積分表示はとあるD加群の順像(Laplace-Gauss-Manin系)として記述されることが昨年度までにわかっていた。本年度はLaplace-Gauss-Manin系の生成元を記述し、この応用としてLaplace-Gauss-Manin系に付随する急減少ホモロジー群とGKZ系の解空間の同型対応を確立した。その際のコンパクト化にはA.Esterov, A.G.Khovanski,松井優、竹内潔らのtoric compact化をより一般化した構成を用いる。また、昨年度に構成したEuler型積分表示に付随した積分サイクルの基底は交点理論的に良い性質を持つことが確認された。積分サイクルの基底は正則三角形分割Tによって構成されるが、特にTが単模の場合には交点行列が完全に決定される。これをねじれ周期関係式に適用し、Aomoto-Gelfand超幾何函数の二次関係式の閉じた公式を得た。上述の成果はarXiv:1904.00565にまとめられている。 2.Cohomology交点数を計算するアルゴリズム:神戸大学の高山信毅氏との共同研究により、1の研究に基づきcohomology交点数を計算するアルゴリズムを考案した。このアルゴリズムは、cohomology交点数をあるPfaff系の有理函数解として定数倍を除いて特徴付け、1の結果を応用して定数倍を決定するという手順を踏む。このアルゴリズムの応用として、志賀弘典氏、成宮氏らにより議論されたK3曲面の族の周期積分に付随した超幾何函数の二次関係式を得た。この成果はarXiv:1904.01253にまとめられている。
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