研究実績の概要 |
本研究で明らかにした「量子色力学におけるカイラル磁気効果と動的臨界現象の相互影響」を骨子(の一部)とする博士論文 “Novel dynamic critical phenomena of superfluidity and chiral transport in QCD,” Noriyuki Sogabe を慶應義塾大学に提出した。審査の結果、合格となり、2020年3月23日付けで博士号を取得した。 磁場中のカイラル二次相転移の動的臨界現象を記述する理論を構築し、量子異常と関係した非相対論的な分散関係を持つ光子が現れることを示した。また、そこでの臨界現象は、平均場理論に基づく解析において、HohenbergとHalperinによる分類に当てはまらない新しい動的ユニバーサリティクラスに属することを見出した。この結果を国際会議を含む学会で広く公表した。 非相対論的な光子が伝播モードとして存在することを示すには、平均場を超えた解析の必要性がわかった。これまでの研究において、U(1)ゲージ場の揺らぐ流体理論を構築し、ゲージ固定によらない動的くりこみ群の処方を見出した。現在、その解析を行っている。この理論は、量子異常を考慮したカイラル磁気流体力学(Chiral Magnetohydrodynamics)の内容を含んでおり、重イオン衝突実験で生成されるクォーク・グルーオン・プラズマやWeyl半金属などへの応用も見込まれれている。また、電磁場が動的な変数であることによる量子異常の非線形効果が取り入れられており、その乱流効果を揺らぐ場の理論を用いて調べられる可能性がある。
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