研究実績の概要 |
ジ置換アミノ酸により配座自由度を制限したヘリカルペプチドのN末端にホスフィン部分を導入したヘリカルペプチド型ホスフィン配位子の開発を行った。アミノ酸6残基からなるヘリカルペプチド型ホスフィン配位子は、EDCIやHOBtなどの縮合剤を用いたペプチド液相合成により容易に合成可能であり、グラムスケールでの合成にも対応可能であった。合成したヘリカルペプチド型ホスフィン配位子はX線結晶構造解析によって、右巻きのヘリックス構造を形成していることが確認された。本配位子をアゾメチンイリドの銅触媒的1,3-双極子付加環化反応に用いたところ、高収率で高ジアステレオかつ高エナンチオ選択的に目的の付加環化生成物を得ることに成功した。本反応で用いた親双極子側の基質であるイソプロピルメチルケトンは、これまで1,3-双極子付加環化反応で高ジアステレオかつ高エナンチオ選択的な反応を達成した報告例がない基質であった。今回のヘリカルペプチド型のホスフィン配位子を用いた場合に得られた立体選択性は、BINAPやSegPhosなどの既存の配位子を用いた場合よりもはるかに高いジアステレオ選択性を示していた。また、他の親双極子(アクリル酸エステルやベンザルアセトンなど)を用いた場合でも高いジアステレオ選択性を示すことが明らかとなった。この高いジアステレオ選択性について、現在のところ、ペプチドのアミド水素が基質と水素結合可能であることがその原因であると推測している。
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