研究課題
特別研究員奨励費
数THz~20 THzの室温連続波発振の実現に向けてフォノン系を用いたレーザの動作原理の開拓を行った。フォノン系の課題として従来のレーザにおいて光増幅のために用いられてきたポピュレーション反転分布が形成できないことがあげられる。本研究ではフォノン系電磁誘起透明化を用いた光吸収制御によりポピュレーション反転分布を用いない光増幅機構の利用を検討している。これまでの研究においてフォノン系電磁誘起透明化の基礎原理である2種LOフォノン系の量子干渉が混晶半導体において成立することが示された。今年度、主に光の吸放出に必要な電気双極子の形成について半導体/金属ストライプ構造を用いて研究を進めた。特に、電気双極子形成に伴う誘電関数の周波数分散の変化に着目して評価した。AlN/金属ストライプ構造の偏光赤外反射測定を行った。電界がストライプと垂直である場合にAlNのE1(LO)フォノンエネルギーに共鳴した反射損失が観測された。この周波数ではAlNの表面を透過した光は基板であるSiCとの界面で反射されることおよびストライプ周期は光の波長より大きいことから観測された反射損失は透過や金属ストライプのワイヤーグリッド偏光子としての機能による偏光依存性に起因したものではないと考えられる。また、反射スペクトルのKramers-Kronig変換およびp偏光の測定において観測された界面ポラリトンモードによりLOフォノン共鳴電気双極子の形成に伴う誘電関数の周波数分散の変化が検知された。これらの結果に基づいてGaAs/金属ストライプ構造を加熱することによりGaAsのLOフォノンエネルギーである36 meV (周波数8.7 THz) に共鳴した発光が観測された。LOフォノン共鳴電気双極子による光の吸放出とフォノン系電磁誘起透明化はフォノン系において反転分布を用いずに光増幅を行うために必要な動作原理となる。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Journal of Physics D: Applied Physics
巻: 51 号: 1 ページ: 015105-015105
10.1088/1361-6463/aa9918