研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、木星磁気圏からの広がったX線放射という日本のX線天文衛星「すざく」で見つかってきた新しい放射を「その場」観測で探ることを最終目標としている。(1) 探査衛星に搭載できる超軽量・広視野X線望遠鏡の開発: 本望遠鏡はマイクロマシン技術を複合的に用いることで完成し、側壁の面粗さ (形状精度) と、鏡の配置精度の改善が課題である。本年度は引き続き望遠鏡の要素技術改良に取り組み、角度分解能を向上させることに成功した。本年度までで合計 150 時間にも及ぶ長時間の高温水素アニールプロセスによって、反射面中央部のラージスケールの平坦化に成功したことは特に大きな成果と言える。さらに化学機械研磨プロセスを検討・導入し、本プロセス後の反射鏡においてX線反射を実証した。これらのプロセスを組み合わせれば、形状精度の大幅な向上が見込める。(2) 木星磁気圏からのX線放射の研究: 「すざく」による木星の全観測データを系統的に解析し、木星本体からの点源状の放射成分と切り分けて、広がった硬X線放射の広がりや強度を定量化した。木星本体成分が太陽活動に追随する傾向にある一方で、広がった成分は有意な変化が見られないことを明らかにした。磁気圏の高エネルギー粒子に由来する木星シンクロトロン電波 (JSR) が太陽活動に対して単純に依存しないことを踏まえ、広がったX線放射も高エネルギー粒子に起因すると予想できる。木星磁気圏粒子分布の経験的なモデルとの比較から、10 木星半径をおおよその基準として、磁気圏内側ではモデルが <10 倍程度過小評価しているとする JSR 観測の示唆と一致する一方で、外側では 10-100 倍の過小評価となる示唆を得た。本結果は、リモートで磁気圏全体 (特に外側) の高エネルギー粒子をモニターする新しい手段として、木星X線観測の有効性を強調するものと言える。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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