研究課題
特別研究員奨励費
前年度に開発した多チャンネルテレメトリマイクロホンシステムを用いて,CF(Constant-frequency)-FM(Frequency-modulated)音をエコーロケーションに用いるニホンキクガシラコウモリの3個体同時飛行時の放射パルスとエコーを各個体から計測することに成功した.これによって,放射パルスの周波数をアクティブに変化させることで,自身の飛行によっておこるドップラー効果をキャンセルし,エコー周波数を狭い周波数帯域内に保つ行動(ドップラーシフト補償行動)が,集団飛行時にも単独飛行時と同等の精度で行われること,さらには,FM型の音声を用いるコウモリとは違い,集団飛行時に周波数重畳を回避するようなエコー周波数の変化が生じないことを明らかにした.この結果は,コウモリがセンシング信号のデザインに適した方法で混信を回避する可能性を示唆する.コウモリの脳表面に配置した電極から,提示される2つの刺激の弁別可能な差によって誘発される脳活動を観測した.その結果,FM信号を用いるコウモリが集団飛行時に行う1 kHz程度の周波数シフトが,実際に音声の聞き分けを促進する可能性が示唆された.また,テレメトリマイクロホンシステムと実時間信号処理機器を組み合わせ,新たにリアルタイム介入実験系を構築した.この系を用い,飛行しながらエコーロケーションを行うコウモリを詳細な時間スケールで妨害することに成功し,コウモリが自身のパルス放射の10から20 ms前後に妨害音を聴取するとパルス放射間隔を大きくすることがわかった.本研究によって,集団飛行時の音響混信に対するコウモリの様々な戦術が明らかになった.さらに,コウモリの行動が混信回避に有用であることがシミュレーションによって示唆され,人工のセンシング技術でも生じうる混信の回避に有用な信号デザインや運用法の開発への基盤が整ったといえる.
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 8件、 招待講演 1件) 備考 (3件)
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