研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、粒子線治療を行う際に体内に挿入し患部周辺の線量測定を行うための小型線量計の開発を行っている。小型線量計に採用している光刺激蛍光体は粒子線を照射した際、消光現象により感度が低下する。消光現象はエネルギー付与密度が増加したため局所的に光刺激蛍光体のトラップ中心が飽和したため発生したと考えられる。粒子線のエネルギー付与密度の評価に比エネルギーがある。消光現象の発生過程が局所的な飽和であれば、比エネルギーを計算することで消光現象の発生度合いを見積もることができる。Eu:BaFBr小型線量計に種々の粒子線を照射したときの発光効率変化を、比エネルギー計算により見積もった。比エネルギー計算のパラメーターである微小サンプリング球の大きさを150 nmとすることで実験値を再現することができた。前立腺がんの炭素線治療において尿道に小型線量計を挿入して使用することを想定して、小型線量計によりビームのアライメントエラーを検知できるか試験を行った。アライメントエラーはビームに対し垂直方向と平行方向に発生する可能性がある。まず、水槽内にEu:BaFBr小型線量計と電離箱を設置し、ビームに垂直な方向の線量計出力分布を測定した。Eu:BaFBr小型線量計の出力分布は電離箱と比較しても炭素線ビーム形状の変化はなく、ビームに対して垂直な方向のビームの位置変化を正確に観測できることが分かった。炭素線治療で用いられるスキャニング法では炭素線のエネルギーを変えて積層することでビームに平行な方向の線量分布を形成する。水槽の前に減速材を設置することでスキャニング法におけるエネルギー変化を模擬した。小型線量計の設置位置をビームに平行な方向に移動させると線量計出力が大きく変化した。この実験により小型線量計は炭素線治療におけるアライメントエラーを検知できることが示された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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