研究実績の概要 |
東京都A区の小学1年生を対象にした2時点(2015年、2017年)の横断調査データを使用し、保護者の養育態度が子供のう蝕にあたえる影響について研究した。26項目の養育態度を因子分析した結果、3パターンの養育態度(poor involvement, child abuse, lack of supervision on health)が抽出され、poor involvementおよびlack of supervision on healthは子のう蝕に関連した。一方で、child abuseは子のう蝕に統計的に有意な関連はみられなかった。child abuseは先行研究ではう蝕の明確なリスク要因と考えられているが、今回の分析の結果、叩く、殴るなどの身体的虐待が直接的にう蝕に影響するのではなく、そのような保護者は子の健康への関心が低いことが子のう蝕の原因となっている可能性が示唆された。 さらに、子ども期から成人期以降にわたる歯科疾患の重要な決定要因である教育歴に着目し、教育歴と歯の本数の因果関係を明らかにするため、英国の調査データであるEnglish longitudinal Study of Agingを利用し横断研究をした。その結果、義務教育を延長した政策により、成人期以降の残存歯数が守られることが明らかになった。 また、生涯にわたる歯科疾患の疾病負荷を推計するため、米国のNational Health and Nutrition Examination Surveyのデータを利用し横断研究をした。その結果、米国成人が20歳以降に被る歯科疾患の疾病負荷は、その他の疾患全体の5%に及ぶことが明らかになった。
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