がん抑制遺伝子RBは、転写因子E2Fを介して細胞周期を制御すると知られている。近年、RBの細胞周期以外の機能に注目が集まっており、我々の研究室では、これまでRBが乳腺細胞および乳がん細胞において細胞競合に寄与する可能性を明らかにしてきた。そこで、本年度は、より生体に近い①3次元モデルおよび②in vivoモデルにおいてRBによる腫瘍内不均一性の影響を検討することを目的とした。 ①3次元モデルとして前年度作成したマウスの乳腺上皮細胞を用いたモデルの解析をした。具体的には、p53+/+; Rbfl/flおよびp53-/-; Rbfl/flマウスの乳腺上皮細胞をマトリジェルおよびコラーゲン内にて培養し、球状の三次元器官構造を安定的に形成した。このように調整した細胞にCre recombinase-GFP アデノウイルスを希釈して、モザイク上に感染させ、その挙動を解析した。その結果、タイムラプス観察によりp53欠損背景におけるRb不活性化細胞が周りの細胞によって基底膜側に押し出されることが分かった。また、蛍光顕微鏡観察を用い、より詳細に検討したところ押し出されるRb不活性化細胞のp21の発現が亢進していることが明らかになった。この現象は、コントロールとして用いたMMTV-cre; p53-/-; Rbfl/flマウスにおいては確認されなかった。 ②p53+/+; Rbfl/flおよびp53-/-; Rbfl/flマウスにトランスポゾンを用いて非ウイルス的にCre recombinase-GFPを発現するプラスミドを作成し、マウスの乳頭から乳腺上皮細胞に導入した。その結果、プラスミドの濃度を希釈してマウスの乳腺細胞に導入することによって、モザイク状にRb不活性化細胞を組み込むことに成功した。今後、二光子励起レーザー走査型顕微鏡を使用し、検証を行うことが必要である。
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