Metal-Insulator-Semiconductor (MIS) 構造素子の絶縁層界面に蓄積させた電荷取出しに由来した過渡電流から移動度を算出するMIS-CELIV法を用いて、有機薄膜の移動度を評価し、さらに、得られた結果の妥当性や材料適用性を検証することで、本手法の有用性を実証することを目的とした。 まず始めにMIS-CELIV法を用いて有機ELの正孔輸送材料であるNPBの正孔移動度とその電界依存性を評価した。これらの解析結果とSCLC測定より求められた値がよく一致することを明らかにするとともに、この一致は解析原理の前提条件や分子配向等の点からみて十分に妥当であることを示した。この結果は、MIS-CELIV解析結果の信憑性の高さを示唆するものだと考えている。次に、注入障壁がMIS-CELIVやSCLC解析に及ぼす影響を比較したところ、MIS-CELIV法は注入障壁による解析の誤り有無を判断できるという利点をもつことを明らかにした。また、百ナノメートル程度のNPB 薄膜において妥当な正孔移動度が算出されたことから、本手法は実デバイスと同様の有機薄膜の移動度測定法として有用であることを実証した。以上の結果より、MIS-CELIV法がTOF法やSCLC法にはない利点を有する画期的な測定手法であることを示すことができた。 次に、有機材料への適用性を検証するため、有機ELや有機薄膜太陽電池によく用いられているMEH-PPV、P3HT、PC61BMの評価を行ったところ、理想的な過渡電流の観測に成功、正孔や電子移動度の算出が可能であることを実証した。これらの研究成果について現在論文をまとめており、今後投稿予定である。
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