研究実績の概要 |
(1) ホスファアルケン系ノンイノセント配位子Eind-PPEPの合成、(2) Eind-PPEPおよびEind-PPEP*を配位子とするコバルト錯体の合成、(3) PPEP*あるいはEind-PPEP*コバルト、ロジウムおよびイリジウム錯体の触媒への応用ついて検討した。具体的には、触媒量の[Pt(PCy3)2]を用いて、ピリジンの2,6位に2,4,6-tBu3C6H2基(Mes*)とEind基をもつ非対称ビス(ホスファエテニル)ピリジン(Eind-BPEP)から、遊離Eind-PPEPを合成した(収率74%)。続いて、Eind-PPEPとCoCl2をTHF中で反応させ、Eind-PPEPをもつコバルト(II)を合成した(収率99%)。更に、KC8による還元後、tBuNCの存在下で塩基を作用させ、Eind-PPEP*をもつコバルト(I)錯体に誘導化した(収率94%)。 PPEP*あるいはEind-PPEP*コバルト、ロジウムおよびイリジウム錯体を用いて、ジメチルフェニルシランによる二酸化炭素(1気圧)のヒドロシリル化反応を検討した。その結果、 PPEP*をもつイリジウム錯体が最も高い触媒活性を示し、触媒回転数は室温で3100、40 ℃で5100に達した。また、得られたギ酸シリルに一級あるいは二級アミンをワンポットで反応させ、対応するホルムアミドが高収率で生成することを示した。更に、DFT計算により、金属-配位子協同作用によるSi-H結合切断を起点とする新規な触媒サイクルを提示した。 ピリジンの2,6位にEind基をもつビス(ホスファエテニル)ピリジンEind2-BPEPを用いて、(4) 形式d10錯体としては前例のない平面四角形構造をとる白金(0)錯体を発見し、錯体の幾何学的安定性と分光学的性質に及ぼす補助配位子の効果について系統的な知見を得た。
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