研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、腸管毒素原性大腸菌(Enterotoxigenic Escherichia coli :ETEC)の病原性発現過程過程において特に重要となる線毛性定着因子の定着機構を、X線結晶構造解析を中心とした手法により、原子レベルで解明することを目的としている。具体的には、“菌体表面にどのような線毛を形成し、どのようにして小腸上皮細胞に結合し、定着を達成するのか?”という課題に関して、各構成タンパク質の三次元立体構造解析、相互作用解析、細胞アッセイなどから得られるデータを総合的に解釈することで、その定着メカニズムと阻害手法を提案する。前年度において、ETECが菌体外に分泌するタンパク質CofJが線毛先端部のCofBおよび腸上皮細胞の両方に結合し、両者の橋渡しをすることでETECは定着を果たすことを明らかとした。本年度は、ETECの定着過程において特に重要であると考えられるCofJが創薬標的となりうるか、細胞実験による検証を試みた。ウサギにCofJタンパク質を免疫することで得られた抗CofJポリクローナル抗体を大腸菌とインキュベートしたところ、Caco-2細胞への付着率が顕著に減少する結果を得た。さらに、CofJのN末端領域がCofBと相互作用することに着目し、結晶構造に基づいてCofJのN末端領域を改変したペプチドを設計した。当該ペプチドは大腸菌のCaco-2細胞への付着率を劇的に抑制した。これらの結果から、ETECが菌体外に分泌するCofJは定着過程における鍵であり、分泌タンパク質と線毛との相互作用を阻害可能なペプチドは有望な定着阻害剤のシーズとして期待される。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 115 号: 28 ページ: 7422-7427
10.1073/pnas.1805671115