研究課題
特別研究員奨励費
線維芽細胞を心筋細胞に直接分化転換する心筋リプログラミングは、心不全などの新たな治療法として期待されている。しかし心筋リプログラミングを臨床応用するためにはさらなる効率改善と分子機序の解明が必要である。私は心臓発生において重要な生体内のメカニカルストレスを応用すれば、心筋リプログラミングを促進できるのではないかと考えた。まず生体内組織の硬さによるメカニカルストレスを培養皿上に再現するために、アクリルアミドゲルに6-アクリルアミドヘキサン酸(ACA)を加え、様々な硬さのACAゲルを開発した。このACAゲル上で心筋リプログラミングを行った結果、足場の柔らかさ依存的に心筋マーカーの発現や拍動する心筋細胞数が増加し、心筋の硬さである8 kPaにおいて最も効率が改善されることがわかった。次に分子機序を解明するために、柔らかいACAゲル上で誘導した心筋細胞と硬いACAゲル上で誘導した心筋細胞の網羅的な遺伝子発現を比較した。その結果、柔らかいACAゲル上で誘導した心筋細胞では心臓関連遺伝子が上昇し、細胞増殖や遊走などの線維芽細胞関連遺伝子が低下することがわかった。細胞は硬い足場に接着するとROCK-ミオシン-YAP/TAZシグナルを介して細胞増殖や遊走を促進する。そこで、YAP/TAZに対するshRNAを用いて、硬いACAゲル上でYAP/TAZを抑制し心筋リプログラミングを行った。その結果、心筋マーカーの発現や拍動する心筋細胞数が増加し、心筋リプログラミングが促進されることがわかった。またROCKとミオシンそれぞれの阻害剤を用いた場合も同様に、心筋リプログラミングが促進されることがわかった。以上の結果から、柔らかい足場上ではROCK-ミオシン-YAP/TAZシグナルが抑制されることで、線維芽細胞関連遺伝子の発現が抑制され、心筋リプログラミングが促進されるという新たな分子機序を解明した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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