研究課題
特別研究員奨励費
ヒトや鳴禽(歌をうたう小鳥)など発声学習をする種では、学習の対象となる音声(親の発話/さえずり)に選好が形成されることがわかっている。本研究では、鳴禽の幼鳥が成鳥から歌を学ぶ系をモデルとし、①親の発声への選好がもつ機能的意義と②選好表出の神経基盤の検証を試みた。①機能的意義:ジュウシマツの幼鳥を両親とともに飼育し、発達上の複数の時点で歌の選好を測定した。テストでは歌刺激を呈示し、音源への接近および発声行動を記録した。父親歌への選好がどのような機能をもつかを理解するために、歌をうたうオスとうたわないメスを比較した。その結果、メスでは発達段階によらず父親歌への接近がみられたのに対し、オスでは幼鳥期にのみ父親歌に選択的な接近がみられた。父親歌への選好は、メスでは性的刷り込みの発現であり、オスでは幼鳥期の歌学習において機能をもつ可能性が示唆された。この研究成果について、本年度は国際学会での発表を1件行い、論文を執筆して国際誌に投稿した(査読中)。②神経基盤:哺乳類の扁桃体に相当する「扁桃核」という神経核が歌の選好表出に必要であるという仮説を検証するために、扁桃核を薬理損傷する実験を行った。これまでに、損傷群5羽と統制群3羽からデータを取得した。損傷はイボテン酸を注入することで行った。その結果、損傷群でのみ手術後に父親歌への相対的な接近頻度が減少する傾向が確認された。したがって、扁桃核は歌への選好表出に関わると考えられた。計画に変更が生じたものの、研究全体を通して、①親の発声に対する選好と歌学習の関係について実際の行動データにもとづいて考察し、②歌選好表出への扁桃核の関与を実証することができた。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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ORNITHOLOGICAL SCIENCE
巻: 19 号: 1 ページ: 3-14
10.2326/osj.19.3
130007792190