研究課題/領域番号 |
17J07202
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
ゲノム生物学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石橋 舞 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2017-04-26 – 2019-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2018年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
2018年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2017年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | コヒーシンアセチル化 / DNA複製 / 定量的ChIP-seq法 |
研究実績の概要 |
申請者は、染色体構造タンパク質コヒーシンのアセチル化による制御機構とコヒーシンのもつ多様な染色体機能との関係に着目し、これを解析するためのゲノム学的手法の構築を行っている。昨年度は、①従来のChIP-seq法では困難であったサンプル間でのDNA結合タンパク質の絶対量比較を可能にする系を確立すること②コヒーシンアセチル化因子ESCO2がヘテロクロマチンに偏在し、そこでアセチル化を引き起こす機構を明らかにすること、を主要な目標として研究を実施した。 ①について、定量的ChIP-seq法(ChIPサンプル調整時にマウス横紋筋ゲノムを等量添加し、このDNA量を内部標準として正規化を行う手法)を新たに導入し、実験・解析系を確立した。この系を用いてまずlateS期の細胞で比較を行った結果、ESCO2KDではヘテロクロマチン領域のアセチル化コヒーシン結合の絶対量が減少することが明らかになった。 ②について、生化学的な解析からESCO2がDNA複製因子MCMと物理的に相互作用することが新たに見出された。そこで、MCMのChIP-seq解析を行うと、ESCO2同様ヘテロクロマチン領域に偏在している様子が観察された。このことから、lateS期の細胞においてESCO2によるアセチル化がヘテロクロマチン領域で優先的に起こるのは、DNA複製との関連を表している可能性が新たに考えられた。そこで、S期の間のESCO2によるコヒーシンアセチル化の動態を体系的に解析するため、細胞周期やノックダウン条件の異なる複数の条件下でアセチル化コヒーシン結合の変化を定量的に解析した。結果、S期において、ESCO2によるコヒーシンアセチル化はDNA複製の早い領域から遅い領域にかけて順に行われる様子が観察され、ESCO2がDNA複製と何らかの関連をもってコヒーシンをアセチル化していることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題開始当初は、ESCO2によるアセチル化はヘテロクロマチン関連因子との相互作用に依存することを予想していた。それゆえ、ヘテロクロマチンとESCO2の機能との関連を解析する実験を研究実施計画に盛り込んでいた。 しかし、その後複数の知見からESCO2とDNA複製との関連が明らかになってきたため、当初の計画を変更し、DNA複製ヘリケースMCMの局在や、S期でのアセチル化コヒーシンの経時的な変化を解析する実験を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の結果から、ESCO2がDNA複製と何らかの関連をもってコヒーシンをアセチル化していることが明らかになった。また、一方で、KDのない通常条件下のアセチルカコヒーシンChIP-seqにおいて、mid S期からlate S期にかけて大部分のアセチル化が減少することを新たに見出した。これは、コヒーシンアセチル化は予想以上に不安定で、一度アセチル化されても数時間で脱アセチル化されることを示唆している。今後は、ESCO2によるコヒーシンアセチル化とDNA複製との関連を詳細に解析する一方で、アセチル化と脱アセチル化の双方からアセチル化によるコヒーシンの制御機構を理解することを新たな軸とし、研究を進める予定である。
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