研究課題
特別研究員奨励費
自然環境中の大多数の細菌は、実験室での培養が困難であり、寒天培地上でコロニーとして分離することができない。つまり、遺伝的に圧倒的な多様性を持つ生物資源である細菌の大多数が、現状では利用できない状況にある。当研究では、自然界の細菌のコロニー形成が極めて低い要因を以下のアプローチで解明することを目指した。昨年度、大腸菌では液体培養時に比べてコロニー形成に多量の脂肪酸が必要であることが明らかになった。本年度は、脂肪酸合成を阻害する薬剤を利用することで、大腸菌以外の細菌でも、脂肪酸の重要性を検討した。大腸菌に加え枯草菌やコリネバクテリウムでも、上記薬剤により脂肪酸合成を阻害すると、液体培地でなら生育できるが固体培地ではコロニーを形成しなくなることがわかった。さらに、土壌から採取した細菌でも、脂肪酸の添加によりコロニー形成数が8倍程度まで増大することがわかった。以上より、脂肪酸は細菌のコロニー形成にとって普遍的な重要性を持ち、自然界の細菌のコロニー形成能が極めて低い要因の一つは脂肪酸の不足にあることが示唆された。なお、本研究の成果は、Microbiology誌に掲載され、Editor’s choiceに選出された。もう一方のアプローチとして、低温飢餓に曝された大腸菌が、生理活性を保ちつつもコロニー形成能を失う状態、すなわちViable but non-culturable(VBNC)状態に陥る遺伝的要因の解明を昨年度に続き進めた。昨年度はcAMPが大腸菌のVBNC化に必須であることを示し、野生株とcAMP欠失株に対するRNA-Seqを実施した。取得したRNA-Seqデータをもとに、cAMPが制御する候補遺伝子の欠失・高発現株を作成し、VBNC化を直接制御する分子メカニズムの解明に努めている。なお、同RNA-Seqデータを使用した論文がCell Systems誌に掲載された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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バイオサイエンスとインダストリー
巻: 印刷中
40021932037
Microbiology
巻: 164 号: 9 ページ: 1122-1132
10.1099/mic.0.000673
Cell Systems
巻: 7 号: 1 ページ: 104-117
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巻: 164 号: 3 ページ: 410-419
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https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2018/20181001-1.html