研究実績の概要 |
平成29-30年度に超好熱性アーキアThermococcus kodakarensisにおいてCoA生合成の最終反応を触媒するdephospho-CoA kinase (DPCK) を同定し解析をおこなった。本DPCKは真核生物や細菌が有するDPCKとは全く異なる新規酵素であり、ほぼ全てのアーキアがホモログ遺伝子を有していることから、アーキア特有な酵素であると考えられる。この新規DPCKの発見により、これまでの研究結果と合わせてT. kodakarensisにおけるCoA生合成の全容が明らかとなった。 平成31年度においては、TK1697遺伝子破壊により、TK1697遺伝子のT. kodakarensisにおけるCoA生合成への寄与を評価した。TK1697遺伝子の下流にはリボソーマルタンパク質をコードする遺伝子 (TK1695, TK1696) が存在し、これらの遺伝子のプロモーターはTK1697遺伝子内部に存在する。そこで、このプロモーターを破壊しない形でTK1697遺伝子破壊株を作製した。 作製した破壊株にTK1697遺伝子発現ベクターを導入した株と空ベクターを導入した株および宿主株を、栄養豊富な培地で85°Cにおいて培養し、増殖特性の解析をおこなった。空ベクター導入株は、全く増殖を示さなかったのに対して、TK1697遺伝子発現ベクター導入株は、宿主株とほぼ同様の増殖特性を示した。したがって、今回作製したTK1697遺伝子破壊株の増殖特性解析により、TK1697遺伝子のT. kodakarensis生体内でのCoA生合成への寄与がより正しく評価された。
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