研究実績の概要 |
CCMに必須な炭酸脱水酵素と推定されているLCIBは、葉緑体レトログレードシグナルの制御因子であるCASと同様に、CO2濃度と光に応答してその局在を葉緑体全体からピレノイド周囲へと変化させる。安定的なCAS蛍光株の作出は困難であったため、これまで単離したLCIBの局在異常株に焦点を絞って研究を進めた。 昨年度単離したLCIB局在異常株4-D1は、タグ遺伝子の挿入変異によりデンプン合成酵素イソアミラーゼ1が欠損し、デンプンを蓄積せず、ピレノイド周囲のデンプン鞘が形成されないことを明らかにした。さらに、デンプン合成に関わるα-1,4 グルカノトランスフェラーゼの変異株sta11-1では4-D1株と同様にLCIBの局在に異常が認められたが、デンプン鞘を薄く形成する変異株sta2-1ではLCIBは正常に局在化した。今回、デンプン鞘の形成がLCIBのピレノイド周囲への局在化に必要であることを明らかにした。 また、4-D1株とsta11-1株は共に、超低CO2条件における生育の遅延と、光合成における無機炭素への親和性の低下を示したことから、デンプン鞘が超低CO2条件における無機炭素に対する親和性の維持に必要であることが示唆された。なお、4-D1株でHCO3-輸送体であるLCIAのタンパク質蓄積レベルが低下したことから、デンプン鞘形成が葉緑体から核へと発信されるレトログレードシグナルに関与する可能性が示唆された。これらの結果を論文にて報告した(Toyokawa et al., Plant Physiology, 2020)。
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