研究課題
特別研究員奨励費
細胞内タンパク質分解系は不要タンパク質を除去することで細胞内恒常性維持に重要な役割を果たしており,この破綻は神経変性疾患など様々な疾患の発症・進行に繋がるとされている.特に細胞増殖をしない神経細胞において,不要タンパク質の除去は細胞生存に深く関わっている.私は細胞内タンパク質分解系の中で現在あまり研究の進んでいないシャペロン介在性オートファジー (CMA) に着目した.LAMP2Aはリソソーム膜上に局在する1回膜貫通型のタンパク質であり,CMA活性に関与する最も重要な制御因子である.最近,我々はいくつかの脊髄小脳失調症モデル細胞においてCMA活性が低下することを明らかとし,CMA活性の低下が脊髄小脳失調症様の運動機能障害を引き起こすと想定した.そこで,4週齢のマウスの小脳にCMA活性を低下させる目的でAAV-GFP-LAMP2A miRNA及び比較対象としてAAV-GFP-Negative miRNAを投与した.マウス運動機能を検討したところ,LAMP2Aノックダウン群では,投与から8週目以降で歩行距離の減少及び踏み外し回数の増加がみられた.また,8週目でみられた運動機能障害はそれ以降でさらに増悪する傾向であった.また,投与後12週目においてマウス小脳冠状切片を作製し,免疫染色により組織学的解析を行ったところGFP陽性細胞周辺で小脳神経細胞の脱落及び分子層の萎縮が認められた.GFP陽性細胞周辺ではさらに,ミクログリアやアストロサイト活性化しており二次的に神経細胞の脱落が誘導されている可能性も考えられる.以上の結果より,LAMP2AのノックダウンによるCMA活性の低下は小脳において神経細胞の脱落や委縮に伴う運動機能障害を引き起こすことが示唆された.本研究結果はタンパク質分解系の一つであるCMA活性の低下が運動機能障害を伴う疾患へ関与する可能性を示した重要な知見である.
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