研究課題
特別研究員奨励費
低ドープ濃度のダイヤモンドに水素終端を施すと、表面に界面準位のない、半導体デバイスに好適な2次元正孔ガス層が誘起される。本研究では、この水素終端表面における、正孔のチャネル移動度を、新奇なデバイスを考案し、評価した。ダイヤモンドの2次元正孔ガス層の移動度低下因子は、先行文献から、絶縁膜やパッシベーション膜として用いられる、酸化アルミニウムなどの誘電体が持つ電荷による外部電荷散乱であると考えられる。本研究では、平成30年度に、ゲート絶縁膜を真空とした、真空ギャップゲート構造を考案し、このデバイスの動作確認に、はじめに取り組んだ。清浄な水素終端ダイヤモンド表面に、絶縁膜に相当する真空層を構成するため、空間を供給するピラーを、ダイヤモンド上の電極をかねて形成した。ゲートには、高強度な導電性のSi基板を用い、チャネルへの接触を防いだ(図1)。これを、高真空プローバーを用いて、ダイヤモンド表面の吸着物を脱離させた状態でFET動作を確認した(図2)。不活ガス中では、ガスの絶縁耐圧が低く、ゲートの絶縁が確保できないと予想されるため、極力高い真空度に雰囲気を制御することが求められたため、この系を採用した。IDS-VGS曲線からは、往復測定をしているがヒステリシスがほとんどなく、往復でよい一致を示していることがわかる。結果として、これから得られた電界効果移動度は25 cm2/Vs であり、ゲート絶縁膜に酸化アルミニウムを用いた一般的なダイヤモンドFETの移動度と同等程度の値であった。また、サブスレッショルド領域から求めた界面準位密度は1×1012 cm-2 eV-1 程度であり、これは絶縁膜の内清浄な水素終端表面で初めて評価された界面準位密度であると言える。本研究の成果は、第32回ダイヤモンドシンポジウムでポスター発表し、優秀ポスター賞を受賞した。今後、英字論文誌に投稿予定である。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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