研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、分裂期移行に伴う染色体関連タンパク質のバルクリン酸化の役割を、DNAとタンパク質が高濃度で存在する環境における、リン酸基周辺の水和効果から解明することにある。採用第3年目の本年は、研究項目3「in vitroクロマチン再構成におけるリン酸化タンパク質のバルク効果の検証」を行った。Ki-67の分裂期における機能へのバルクリン酸化の影響の検証Ki-67は、rRNAや核小体タンパク質で構成される分裂期染色体周縁部の構築に必須のタンパク質である。分裂期染色体周縁部は、染色体一つ一つの独立性を保つことに寄与していることが報告されている。さらには、染色体周縁部は液相ではないかと示唆されてきた。前年までの結果より、Ki-67が分裂期バルクリン酸化タンパク質であり、その分裂期バルクリン酸化がKi-67のin vitroにおける液相の形成に重要であることがわかった。本年度はまずKi-67のバルクリン酸化の効果をin vivoで検証した。Ki-67の変異体を用いた解析により、Ki-67が分裂期リン酸化を受けることで染色体周縁部を構築し、それによって染色体の異常な凝集を防いでいることがわかった。最後に、液相形成による染色体周縁部in vitro再構成を試みた。この解析から、Ki-67の分裂期バルクリン酸化が液相形成を促進する役割を持つとともに、Ki-67のDNA結合能によって液相形成可能な程度まで分子の局所濃度が上昇するメカニズムが示唆された。これらの結果から、分裂期移行に伴う染色体関連タンパク質のバルクリン酸化が、液-液相分離の原理を通じて分裂期染色体構築に寄与していることが明らかになった。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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