研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、レーザー分光を駆使したハロゲン化金属ペロブスカイト半導体および太陽電池構造中のキャリア挙動の解明とその理解に基づく光電特性向上への指針を示すことを目的としている。本年度は、これまでに開発した分光システムを用いて、非鉛太陽電池材料として期待される錫ペロブスカイト半導体中のエネルギー損失機構を評価した。錫ペロブスカイト薄膜および太陽電池試料の発光寿命の励起レーザー強度依存性を計測すると同時に、太陽電池試料からの光電流値を測定した。この測定と解析の結果、錫ペロブスカイト太陽電池では、ペロブスカイト層内で速いバルク非輻射再結合が生じ、これがデバイス内のキャリアダイナミクスを支配することを明らかにした。非鉛錫ペロブスカイト太陽電池の更なる高効率化に向けて、正孔密度の抑制によるキャリア拡散長の増加と光吸収層厚の適切な制御が不可欠であることを示した。次に、昨年度発見したハロゲン化鉛ペロブスカイトにおける特徴的な光誘起屈折率変化の起源を解明した。独自に構築した高精度光干渉計を用いることで、光励起によりCH3NH3PbCl3の屈折率が減少することを明らかにした。独立な測定から屈折率の温度依存性を決定し、この物質が温度上昇に伴う屈折率の減少すなわち負の熱光学係数を示すことを発見した。負で大きな熱光学係数と小さな熱伝導率が光誘起屈折率減少をもたらすことを解明した。精密な屈折率変化量の決定と実験条件から、太陽光程度の励起条件下での熱光学効果はペロブスカイト太陽電池の光電変換効率にはほとんど影響を与えないと見積もった。さらに、負の熱光学係数が従来の無機半導体が示す正の係数と逆であることに着目し、ペロブスカイト半導体を用いることにより無機半導体中で温度変化に伴い生じてしまう光路長変化を補償することに成功した。特徴的な熱光学特性を活用したハロゲン化金属ペロブスカイトの新しい光機能を実証した。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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