研究課題
特別研究員奨励費
本研究の目的は、体細胞核移植により作成したオルニチントランスカルバミラーゼ欠損症(OTCD)モデルブタの有性生殖的方法による量産システムの構築と、OTCDブタのトランスレーショナルリサーチへの応用である。今年度は、OTC遺伝子KOの形質を有する精子を用いた後代個体の作出と表現型の解析を行った。OTC遺伝子KOキメラオスと野生型メスの交配で得たF1雌個体には、理論値通り約1/2の確率(34/74)で変異遺伝子が伝達していた。OTC遺伝子ヘテロKO変異のキャリア個体(変異キャリア雌)の中には高アンモニア血症の症状を示す個体が確認された(8/31)。変異キャリア雌の突発的なOTCD発症について研究を深化させることは、臨床的な価値が非常に高い。変異キャリア雌の交配により得られた産仔(計229頭)には、1/2の確率でOTC遺伝子の変異が伝達した。この結果は、X連鎖性劣性遺伝の遺伝様式に合致する。OTC X-Y雄は、出生時からOTCDの症状を呈した。以上の結果から、OTCキメラ雄を起点とし、OTC遺伝子変異の形質はF2世代まで忠実に継承し、OTCDブタの量産体制が確立された。得られたOTCD個体の症状は重篤であった。これらの個体に対して細胞移植、遺伝子治療などの試験を行うためには、内科的介入による延命処置が必要であった。そこで、アンモニア解毒や窒素クリアランスを企図した療法や栄養補給法について検討した。OTCD新生仔生の血中アンモニア値は、出生時より平均375μg/dL(n=14)と高値であり、死亡前には2000μg/dLに達した(正常値:120μg/dL以下)。シトルリンおよびフェニル酪酸ナトリウムの経口投与や、安息香酸ナトリウムおよびアルギニンの経静脈投与を行なった結果、一定期間血中アンモニア値を低値(35-168μg/dL)に維持し、数日程度の延命に有効であることを確認した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Proc Natl Acad Sci USA
巻: 115 号: 4 ページ: 708-713
10.1073/pnas.1715940115