球状風化は、節理から岩石内部へ変質・分解が進み、岩石表面を皮殻状に剥離させて、岩塊の角が次第に取れて丸くなる現象である。既往研究では、火成岩の球状風化に対する風化前の節理の特徴と岩石の初生的な構造の影響はほとんど考慮されてこなかった。 本研究によって、柱状節理の発達した玄武岩と花崗斑岩は、柱状節理に囲まれた岩石内部に初生的構造を有することが示された。そして、それらの球状風化は、節理から供給される酸素と水による化学的風化の進行とその風化に伴う亀裂形成とが初生的組織・構造に強く支配された結果であることが明らかとなった。以上の玄武岩の研究結果は国際誌に投稿中である。 また、柳生花崗岩の詳細な地表踏査によって、花崗岩類の風化形態は、その同一岩体内で岩体の貫入境界からの距離に応じて変化していることが明らかになった。柳生花崗岩体が貫入した堆積岩との境界に近いところでは、球状風化が認められ、その境界から4 km以上離れた岩体中心部では、マイクロシーティングや等方的な亀裂を伴うマサがその代わりに認められた。花崗岩体は周縁部から中心に向かって、花崗閃緑岩から花崗岩に変化し、苦鉄質鉱物の含有量が減少する正規組成類帯構造を示した。球状風化の有無と岩相とは対応していなかった。球状風化の認められる地域の岩盤は、ある種の柱状節理と考えられる高角節理が発達しており、マイクロシーティングの場合は地域の応力場を受けて生じたと考えられる2方向の高角節理が発達していた。したがって、花崗岩類の球状風化は、そのような柱状節理の形成を伴う冷却過程と岩石構造が要因である可能性が考えられる。この新しい考え方は、球状風化が小規模貫入岩体に典型的に認められてきたことと調和的である。今後、その花崗岩類の球状風化に関する研究結果を発表する予定であり、節理の成因を追究する方針である。
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