2017年度から継続していた現地調査を2018年7月まで行った。調査では、ベトナム・ニントゥアン省におけるチャム人、キン人、ラグライ人の民族関係の動態と着衣の実践との関連性を考察するために、フィールドワークによる資料収集と公文書館における資料収集を行った。 フィールドワークにおいては、チャム人の洗骨儀礼や司祭を承認する儀礼、チャム人居住地の近隣に居住するラグライ人とチャム人との関係について調査を行った。そこから、バラモン教徒(アヒン)とバニ教徒(アバール)が相互補完的な関係にあるのことがわかった。さらに、政府機関をも巻き込みながら年に一度行われるチャム人のカテ祭りにおいて、ラグライ人たちが、チャンパ王国の王の服の管理者として、重要な儀礼的役割を果たしていることがわかった。これは、少数民族間の交流を警戒するベトナム政府が両者の交流を公的に承認していることを示すものである。 公文書館においては、1950年代から1970年代、ベトナム共和国統治下のニントゥアン省における少数民族政策に関する資料を収集した。具体的には、ベトナム共和国政府による少数民族管理の方策や、少数民族居住地を経済的に発展させるための施策、民族解放戦線による蜂起の記録に関する資料を収集した。 帰国後は、調査で得られた資料の分析と考察を行い、博論執筆および学会発表や学会誌への論文投稿として発表するための準備を行っている。
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