1.性ホルモンが乾癬発症に及ぼす影響の検討を行った。性ホルモンの中でも血清エストラジオール値が乾癬の重症度と逆相関するという疫学データからエストラジオールに着目した。エストラジオールをマウスに投与して乾癬のマウスモデルであるイミキモド誘発性乾癬様皮膚炎に及ぼす影響を検討した。エストラジオールを投与したマウスにおいて、プラセボを投与したマウスと比較してイミキモド乾癬様皮膚炎は減弱した。皮膚に浸潤する好中球、マクロファージ、樹状細胞の数はエストラジオール投与群において有意に低下し、CXCL2やIL-1βも有意に低下していた。 2.皮膚における性ホルモン受容体発現細胞のプロファイリングをした。皮膚の構成細胞におけるエストラジオールの受容体であるEstrogen receptor αとEstrogen receptor βの発現をフローサイトメトリーにより検討した。各Estrogen receptorは乾癬の病態における重要な役割を果たしているケラチノサイト、樹状細胞、T細胞、好中球、マクロファージなどすべての細胞に発現しており、エストラジオールが乾癬の病態において重要な役割を果たしている可能性が示唆された。 3.性ホルモンの乾癬発症におけるターゲットとなる細胞の同定として、上記Estrogen receptorを発現している細胞特異的にエストロゲンレセプターをノックアウトするマウスを作製し、エストラジオールの効果が減弱するかどうかを検討した。現時点において、エストラジオールの効果が減弱するノックアウトマウスは見つかっておらず、今後の検討課題とした。 4.ヒト検体を用いた性ホルモン作用の検証。上記イミキモド誘導乾癬様皮膚炎において減弱していたCXCL2やIL-1βの発現をヒト乾癬皮膚においてエストラジオールを作用させた状態で検討したところ、ヒト皮膚においても同様に発現の減弱がみられた。
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