研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、I型コラーゲンの線維形態を制御するOsteomodulin(OMD)とコラーゲンの詳細な相互作用解析から、制御機構を記述することを目的とした。そしてその知見に基づき、生体内外における線維の人工制御法の確立を最終ゴールとした。当該年度においては計算科学(in silico)や生化学実験(in vitro)、動物実験(in vivo)を用いることで、OMDによる線維形態の制御機構を包括的に明らかにすることに成功した。[In silico & in vitro] 計算化学を用いたドッキングシミュレーションにより、OMDに結合するコラーゲンの候補配列を抽出することに成功した。さらに、その領域に結合することが既知の蛋白質とOMDのコラーゲンに対する競合アッセイを行った結果、競合的にコラーゲンに結合することがわかり、シミュレーションの結果をin vitroの系から支持することに成功した。このことから、OMDは特定の領域のコラーゲンに結合することで線維形態を制御していることを示唆した。続いて、OMDを添加して形成されたコラーゲン線維に温度刺激を加え、その構造・物性を電子顕微鏡、円偏光二色性スペクトル、濁度計により解析した。その結果、OMD添加により安定な線維構造が形成されることがわかった。OMDは線維形態だけではなく、精密な線維構造の形成、つまり“質”の制御を行っていることが明らかとなった。[In vivo] マウスの骨コラーゲンで明瞭な結果を得ることに成功した。具体的には野生型とOMD欠損マウスの骨コラーゲンの線維幅を解析した結果、有意に異なることを示した。OMDは骨に発現する蛋白質であるため、本結果は生体内のOMDの機能を示していると考えられる。以上から、OMDはin vivo/vitroでコラーゲン線維を制御することを明らかにし、その制御機構の解明に大凡成功した。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Communications Biology
巻: 1:33 号: 1 ページ: 1-10
10.1038/s42003-018-0038-2