研究課題
特別研究員奨励費
リチウムイオン二次電池の高エネルギー密度化に対する社会的ニーズが益々高まっている。その一環として、既存の4 V級より高い作動電位を有する次世代5 V級正極材料の構造解析や電気化学的性能評価が過去10年間活発に行われてきたが、まだ実用化までには至っていない。この原因として、正極材料、集電体、電解液、バインダー、セパレーター、炭素導電助剤など電池を構成するほぼ全ての材料が5 Vの強い酸化雰囲気において激しく劣化してしまうことが挙げられる。当研究室では日本学術振興会のサポートの基に行われた過去2年間の研究を通し、高酸化耐性の新規常温溶融溶媒和物電解液の開発、そして電池構成部材 (セパレーター、バインダー、炭素導電助剤) の最適化を行い、初めて4.8 V Li2CoPO4F/graphite (cutoff 5.2 V) フルセルの安定作動に成功した。しかしながら、その性能は500回の充放電のおいて初期容量維持率80 % 程度であり、実用化した 4 V級リチウムイオン電池の基準 (80 %初期容量維持率/1000回充放電) を満たすことはできなかった。これは今までの高電圧フルセル開発の戦略において我々が見逃していた重要な因子が存在することを示唆する。今年度は、多角度の検討を通し炭素導電助剤へのアニオンインタカレーションが充放電安定性に多大なる影響を及ぼすことを明らかにした。このことから、今まで報告されたことのない炭素導電助剤へのアニオンインタカレーションを抑制する高電圧電解液システムの開発と共に、4.8 V Li2CoPO4F/graphite (cutoff 5.2 V) フルセルの充放電安定性の大幅向上 (93 %初期容量維持率/1000回充放電) に成功したことを報告する。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 2019 2018 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件) 産業財産権 (1件)
Carbon
巻: 158 ページ: 766-771
10.1016/j.carbon.2019.11.051
Electrochemistry Communications
巻: 104 ページ: 106488-106488
10.1016/j.elecom.2019.106488
ACS Applied Materials & Interfaces
巻: 11 号: 49 ページ: 45554-45560
10.1021/acsami.9b13662
Nature Energy
巻: 4 号: 4 ページ: 269-280
10.1038/s41560-019-0336-z