研究課題
特別研究員奨励費
本研究の目的は、脊索動物の原型を有していると考えられるカタユウレイボヤを用いて、神経ペプチドによる卵成熟・排卵制御ネットワークを解明することである。平成30年度は計画に従い、神経ペプチドによるホヤ卵成熟・排卵制御カスケードの決定を試みた。ホヤの卵成熟制御因子は、脊椎動物と無脊椎動物で広く保存されているMPFであることが示唆されていたので、p13suc1ビーズによるホヤMPFの濃縮と、ELISAによる活性の検出法を組み合わせ、神経ペプチドによるMPF活性上昇の検出を試みた。しかしながら、活性測定に十分量のタンパクを確保できなかったため、MPFの構成因子であるCdc2の阻害剤 (Ro-3306) を用いた実験に変更した。単離したホヤ卵胞をRo-3306と神経ペプチドとで同時処理にすることよって、神経ペプチド単独処理による卵成熟促進効果が打ち消されることがわかった。また、このRo-3306は内在のCdc2活性阻害を介してホヤ卵成熟を阻害することをin vitroで示し、さらに人工授精実験によって神経ペプチドが確かに卵成熟を促進させることを明らかにした。以上により、神経ペプチド→MEK/ERK→MPF→卵成熟という制御カスケードが明らかになった。神経ペプチド下流の排卵制御機構についても同様に、単離したホヤの卵胞を、排卵実行酵素の候補であるメタロプロテアーゼ (MMP) の阻害剤と神経ペプチドとで同時に処理することにより、神経ペプチド単独処理による排卵促進効果が打ち消されることがわかった。また、神経ペプチド受容体、MAPK, MMPの局在解析によって、神経ペプチドによるMMP発現誘導は卵母細胞で起こり、排卵時に起こるコラーゲンの分解は外側濾胞細胞で起こることも明らかにした。以上の結果から神経ペプチド→MEK/ERK→MMP→コラーゲン分解→排卵という制御カスケードが明らかになった。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件)
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