ブラックホール(特に自転するブラックホールでKerrブラックホールとよばれる天体)による波の散乱問題を解くことで、重力レンズ効果における波動効果について議論し、最近観測されたブラックホールシャドウに関連するphoton sphereについて研究することが本研究の目的であった。 研究項目は WKB近似を用いた短波長波の散乱の解析(自転が小さい場合、一般の場合) 2.数値計算を用いた長波長波の散乱の解析(波面の様子、回折効果) 3.波の偏光を考慮した散乱問題の解析 (電磁波や重力波) 研究を進めていくとKerrブラックホールの場合には計算が難しく項目1の自転が小さい場合についての計算を半解析的におこなう手法を構築するところまで進んだ。最後の結果まで出すことができれば論文を執筆する予定である。また一般の自転速度の場合には短波長波ではあるが数値的に散乱波を計算することに成功した。散乱波のパワースペクトルを解析しており、photon sphereの効果を調べ論文にしていく。項目2についてはKerrブラックホールで計算する前に球対称なブラックホールと、ブラックホール疑似天体(一見ブラックホールに見えるがブラックホールと異なる天体で幾何光学(光線軌道の解析)では区別がつかない場合もある)による波の散乱を計画書でも述べたルンゲクッタ法により計算した。この結果は2019年5月中には論文として提出する。項目3については2018年4月より移籍した京都大学基礎物理学研究所の受け入れ教員であるワーナーマークスクリスチャン助教と共に研究を進めている。研究成果は国際会議JGRG28で発表した。2019年4月現在、同助教と偏光や曲がった時空上の電磁波に関する研究の論文を準備中である。研究の進捗度合いは60%程度である
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