研究課題
特別研究員奨励費
近年解明されつつある核内DNA構造のクロマチンドメインがDNAトランスアクションの機能単位として働いているという仮説のもと、クロマチンの密度という物理的な側面からのアプローチを行った。クロマチンが凝集していれば、転写活性化のための転写因子等はその領域にアクセスすることが出来ず、転写不活性になると考えられる。我々はクロマチンが実際にどの程度アクセスバリアとして機能しているのかを解明することを目的として、クロマチン密度定量を行った。この密度定量のために、米国MBLにてMichael Shribak博士の開発した顕微鏡を用いた。観察対象のモデルとして、大きなクロマチン凝集領域であるマウス細胞のクロモセンターと呼ばれるヘテロクロマチン領域およびヒト細胞の不活性化X染色体領域を選択した。これらの生細胞を観察・解析し、生細胞核内のクロマチン密度定量に世界で初めて成功した。定量したマウス細胞のヘテロおよびユークロマチンの密度はそれぞれ208mg/mLおよび136mg/mLで2値の比は1.53となり、ヒト細胞においてもほぼ同様だった。一方、従来の蛍光観察手法でDNAを染色して観察した際、ヘテロクロマチンとユークロマチンの蛍光強度比は5.5から7.5となり、上記の密度の結果よりはるかに高い比となる。すなわち、ヘテロクロマチンにはDNAのみが高濃度に含まれ、凝集しているいうことが示唆された。この得られた存在量を基にコンピューターシミュレーションを行い、ヘテロクロマチンに対する転写因子のアクセスのしやすさを推定した。推定の結果、我々が定量した値ではヘテロクロマチンは十分なアクセス阻害を示すことが分かった。しかし、その阻害は完全ではなく、わずかながらアクセスを許すことも観察された。したがって、ヘテロクロマチンはその密度によって“マイルドな”アクセスバリアとしての機能を果たしていることが示唆された。
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Current Biology
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