研究課題
特別研究員奨励費
フルクトースは清涼飲料水などに利用され、誰しもが日常的に摂取する天然甘味料である。近年のフルクトース摂取量の爆発的な増加に伴い、妊婦のフルクトース摂取量も増加の一途をたどっている。妊婦の栄養状態は児の海馬機能に大きく影響するため、フルクトース過剰摂取による影響が懸念される。本研究の目的は妊娠母獣のフルクトース過剰摂取による仔海馬に及ぼす悪影響とその分子メカニズムを明らかとすることである。フルクトースを過剰に摂取した妊娠母獣から生まれてきた仔を対象に行動試験を行ったところ、海馬に依存した認知機能の低下が認められた。さらに記憶の形成を担うとされる海馬における神経新生数の減少が認められた。母獣のフルクトース摂取による仔の認知機能の低下と神経新生の減少のメカニズムを明らかとするために遺伝子発現解析を行ったところ、海馬機能において重要なタンパクであるBDNF (brain derived neurotrophic factor; 脳由来神経栄養因子) が幼少期から成熟期にかけて持続して低発現を示すことが明らかとなった。タンパク量も同様に低下していた。BDNFの遺伝子発現を制御しているプロモーター領域のDNAメチル化率をパイロシーケンサーで定量解析すると、遺伝子発現解析の結果と一致して幼少期と成熟期ともにDNA高メチル化が認められた。これらの結果から母獣のフルクトース水摂取はDNAメチル化を介して持続したBDNFの遺伝子発現低下をもたらし、結果として認知機能の低下および神経新生の減少を引き起こしたことが示唆された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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FASEB J.
巻: 32 号: 5 ページ: 2549-2562
10.1096/fj.201700783rr