研究実績の概要 |
24匹の雄性Wistar系ラットをそれぞれ伸張性収縮群(20匹),コントロール群(4匹)に分類し、さらに伸張性収縮群では解剖を直後,1,3,7,10日後(各4匹)に実施する群を設定した。 ①腓腹筋内神経および坐骨神経の評価 損傷の時系列変化を観察するため, エバンスブルー(EBD)投与による筋内神経および坐骨神経血管透過性の亢進を観察することとした。各群に伸張性収縮を実施した後、解剖の24時間前にEBDを投与した後腓腹筋および坐骨神経を摘出し組織は5mm間隔に分割した。筋内神経評価ではEBD浸潤箇所が筋線維か筋内神経かを区別するために、レクチンで染色を行いEBD陽性で尚且つレクチン染色箇所が重複した箇所を損傷箇所とした。その結果直後には観察されなかった損傷が1日後および3日後群で観察され7、10日後には消失した。また坐骨神経では直後から7日後群において神経内部へのEBD透過性亢進を確認し、直後群では損傷筋近傍で観察されたEBD陽性箇所が、3、7日後群では日数経過に伴って脊髄近傍で生じていることを確認した。 ②神経筋接合部の評価 次に坐骨神経と腓腹筋を連結する神経筋接合部(NMJ)の評価をおこなった。NMJの損傷評価のための損傷マーカーとして末梢神経損傷時に骨格筋内速筋線維のNMJにおいて発現量が高くなる心筋型トロポニンTを用いた。まず、NMJの破綻を伴うデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)ラットをポジティブコントロールとして、腓腹筋内心筋型トロポニンTの発現量を解析した。その結果、心筋型トロポニンTの発現は健常ラットと比較して有意に亢進していた。また伸張性収縮誘発性の神経損傷モデルでは、伸張性収縮実施直後群の最も近位部(坐骨神経側)において心筋型トロポニンTの発現の亢進を確認した。この結果から伸張性収縮誘発性の神経損傷時にはNMJも損傷している可能性が明らかとなった。
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