研究課題
特別研究員奨励費
本研究の目的は未知なる骨吸収調節機構の存在を明らかにすることである。申請者は骨に対する生理学的意義が十分に解明されていないグルココルチコイド(GC)に注目し、生きたまま体内の骨や細胞を直接観察できる遺伝子改変メダカを用いてGCが骨代謝に及ぼす影響を解析した。3年度は、骨に対するGCの生理学的作用を検討するために、GC受容体(GR)を機能不全にしたメダカの骨折修復モデルを用いて以下の点について解析を進めた。またその成果は国際誌に掲載された(Azetsu et al., Biomed Pharmacother 2019)。① 骨折修復におけるGR2の機能解析メダカは2種類のGR「GR1とGR2」を有し、それぞれが異なる染色体にコードされている。GR2は、GR1と比較してはるかに低い濃度のGCでシグナル伝達できることから、メダカではGR2が主要なGCシグナルを担うと考えられている。申請者はCRISPR-Cas9ゲノム編集技術を用いて全身でGR2を機能不全にしたGR2遺伝子欠損メダカを作製した。このメダカと破骨細胞や骨芽細胞が蛍光タンパク質で標識された遺伝子改変メダカを掛け合わせて骨折の修復過程を観察したところ、骨折部位に動員される破骨細胞と骨芽細胞が約2倍に増加した。この結果は、GR2が生理的に骨折修復における破骨細胞と骨芽細胞の動員を抑制することを示唆しており、細胞動態とGCの関連性について新たな知見を得ることができた。② GCによる破骨細胞抑制作用経路の検討GCはGRだけでなくミネラルコルチコイド受容体(MR)とも結合して様々な転写を制御する。GRに対して高い特異性を示し、MRとほとんど結合しないGC製剤デキサメタゾン(DX)をGR2遺伝子欠損メダカに投与すると骨折部位の破骨細胞が減少した。これはDXがGR1を介して破骨細胞の動員を抑制した可能性が高く、GC製剤による破骨細胞への抑制的作用は、主にGRを介したGCシグナルによって生じることが示唆された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 1件)
J Oral Biosci
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昭和学士会誌 総説
巻: 印刷中