研究課題
特別研究員奨励費
本研究では、脳血管性認知症におけるミクログリア/マクロファージを介した炎症機構の解明を目指した。これまでに、野生型 (WT) およびTRPM2-KOマウスに微小金属コイル装着による両側総頚動脈狭窄 (BCAS) を施したところ、BCAS処置28日後のWTマウスでは認知機能障害および白質傷害が認められたのに対して、TRPM2-KOマウスではそれらが顕著に抑制されることを示した。脳血管性認知症の病態生理においてどの細胞に発現するTRPM2が重要であるかを明らかにするために、脳梁部における免疫組織化学的検討を行った。ミクログリア/マクロファージと想定されるIba1陽性細胞数を定量したところ、WTマウスでは顕著な増加が認められたが、TRPM2-KOマウスではその増大は抑制されていた。さらに、脳常在性のミクログリアと末梢由来の浸潤マクロファージのどちらが脳血管性認知症の病態形成に寄与するのかを検討するために、末梢骨髄をGFP標識したキメラマウスにおいてBCAS処置を行った。その結果、脳梁部に集積したIba1陽性細胞はGFPを共発現しなかったことから、Iba1陽性細胞は脳常在性のミクログリアであることが示された。さらに、WTマウス由来の末梢骨髄に置換したTRPM2-KOマウスでも、Iba1陽性細胞数の増加、成熟オリゴデンドロサイトと想定されるGSTpi陽性細胞数の減少および認知機能障害が抑制された。これらの結果より、ミクログリアに発現するTRPM2が脳血管性認知症に伴う白質傷害および認知機能障害の病態に関与することが明らかとなった。本研究によって、脳血管性認知症におけるミクログリアの病態生理学的役割の一端を解明できた。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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The Journal of Neuroscience
巻: 38 号: 14 ページ: 3520-3533
10.1523/jneurosci.2451-17.2018
120006630983
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2017/180309_1.html