研究課題
特別研究員奨励費
本研究は,日本列島のジュラ紀付加体の層状チャート中に産する層状マンガン鉱床を対象に,その形成過程を明らかにすることを目的としている.平成29~30年度において,複数のジュラ紀付加体において地質調査を行い,層状チャートから産出した放散虫化石から,層状マンガン鉱床は後期三畳紀の前期(カーニアン; 2.37~2.27億年前)に堆積した層状チャート中に共通して産することを明らかにし,微量・希土類元素の定量分析を行った.令和元年度では,より正確な層状マンガン鉱床の堆積年代を決定するために,マンガン鉱床に付随する層状チャートからコノドント化石の抽出・同定を行い,微量・希土類元素の定量分析,オスミウム同位体比分析に取り組んだ.また比較検討のために,同時代に堆積した美濃帯犬山地域に露出する後期三畳系層状チャートに対しても同様に,微化石層序の再検討および化学分析を行った.その結果,まず本研究で用いた微化石層序の模式地である犬山地域の後期三畳系カーニアン層状チャートに対して,放散虫―コノドント生層序の再検討を行った.この生層序と層状マンガン鉱床に付随する層状チャートから産出した微化石に基づくと,層状マンガン鉱床の堆積年代が前期カーニアンに比較されることが明らかとなった.化学分析の結果,層状マンガン鉱床相当層付近においてV,U ,いくつかの親銅元素の濃集,およびオスミウム同位体比の低下が認められた.また,犬山地域の層状チャートからも層状マンガン鉱床堆積年代付近において同様の傾向が認められた.これらの結果は,ヨーロッパの研究で報告されている,後期三畳紀カーニアンに起こった北米のランゲリア洪水玄武岩を噴出した大規模火山活動,およびそれに伴う海洋環境変動による影響を反映していると考えられ,層状マンガン鉱床の形成と古環境変動の関連性について議論を行った.これらの研究の成果の一部は国際誌に投稿中である.
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Earth-Science Reviews
巻: - ページ: 103176-103176
10.1016/j.earscirev.2020.103176
Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology
巻: 印刷中
地質学会News
巻: 21 ページ: 9-10