研究実績の概要 |
嚢胞性繊維症(Cystic Fibrosis, CF)は、CFTRを原因遺伝子とする常染色体劣性遺伝性疾患で、欧米人に最も多い遺伝病である。一方でアジア人種には極めてまれな疾患であり、日本における頻度は、出生60万人に1人程度である。しかしながら、日本人CF患者では、欧米人で頻度の高い病因性のCFTR変異は検出されず、データベースに未登録あるいは欧米人ではまれな変異が検出されている。欧米人とは異なった変異の様相を示すことから、日本人はじめアジア圏に特化したCFTR研究は、喫緊の課題である。本研究では国内CF患者から同定されたアミノ酸置換を伴うCFTR遺伝子変異に着目し、それらがCFTRタンパク質の発現、局在、機能に与える影響をin vitroの実験系で検証することを目的としている。 2年目となる平成30年度は、初年度の大規模欠損体における結果をまとめ、国際的専門誌に発表した(論文1)。一方で国内のCF患者から解析されたCFTR遺伝子変異25種類(アミノ酸置換・血管を伴うもの)のうち、日本人患者から検出された変異は、昨年度解析を行った大規模欠損体Δ(G970-T1122)を含めて計8種類ある。これら日本人患者から検出されたCFTR変異を培養細胞に発現させ、その発現様式を検証したところ、途中にstop codonをもつCFTR(R75X)を除く7種類のうち、6種類がプロセシング異常を引き起こすclassⅡ変異であり、CFTR(R347H)は唯一、チャネル機能に異常をきたすclassⅢ変異であることが明らかとなった。そこでこれら変異のうち、複数の日本人患者で検出されているL441P, H1085R, T1086Iの3種類について、安定発現株を樹立し、その特性解析を行った。
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