研究課題
特別研究員奨励費
本プロジェクトの目的は、ストレス関連精神症状を標的とした包括的認知介入プログラムの開発および効果評価であった。これまでに適格基準を満たした参加者100名以上からデータを収集している。プログラムの有効性については解析中であるが、予備データからは本プログラムがストレス関連精神症状を軽減させる可能性が示唆されている。なお今年度は、本研究で得られたデータをもとに、幾つかの主要な研究成果を発表した。成果のうち一つは、不安障害に対するハイリスクを有する者では情動的にネガティブな情報に対する記憶の記銘が強まりやすいのに対して、ポジティブな情報に対する記銘は弱くなりやすいこと、そしてこうした現象の背景には、中枢神経系の扁桃体外側基底核と膝下前帯状皮質の機能結合が密接に関連していることを見出したことである。また別の成果として、代表的なストレスホルモン・コルチゾールが視空間記憶の想起を損ない、この効果が海馬と外線条皮質の機能結合によって完全に媒介されていたことを見出したことである。これらの成果は、Biological Psychiatry: Cognitive Neuroscience and NeuroimagingやPsychoneuroendocrinologyといった臨床認知神経科学および精神神経内分泌学の名誉ある国際学術雑誌に原著論文として掲載された。本プロジェクトにおいて開発した認知介入プログラムは世界でも初めての試みであり、その効果が示されれば、今後不安障害やうつ病などストレスに関連した精神障害の治療・予防に大きく貢献することが期待される。
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