研究実績の概要 |
平成29年度では、日本のエネルギー政策の形成過程について,政府審議会資料,各アクターの公表資料及び審議会議事録・マスコミ報道がある発言内容から分析を行った.分析結果は,同年6月の日本公共政策学会大会において企画セッションを主催し発表するとともに,発電コスト検証に係る政策過程部分については,同年7月に雑誌「環境と公害」に投稿・掲載(査読付)された.政策過程分析の枠組み(ACF等)に係る文献調査を進め,理論的分析枠組みの精緻化を継続した.30年度では,ACFとの分析枠組みを基に,日本のエネルギー政策形成過程における要因につき論文を公刊,初年度におけるコスト検証に係る政策過程論文と合わせ,ACFの活用による政策過程における日本の政策形成要因として,(1)技術的専門性による情報の非対称性,行政権限,総合的取り組み能力との資源の有無,(2)資源を有する諸アクターの戦略的行動の有無,(3)外的事象に影響を受けない政策中核信条の有無,が明らかとなった.一方,(4)外的要因を連合行動に取り込み連合行動に契機を与えるアクターの有無が変化の可能性要因と示唆された. 続く令和元年・2年度では,欧州との比較分析の精緻化を図るため,ACFの国内適用事例の操作可能性につき研究を行い,論文は令和3年8月に国際専門誌に掲載(共著:査読有)された.得られた知見は日本事例に係る定性的分析の限界と今後の定量的分析の可能性である. これにより,欧州連合の専門家との間でオンラインによる面談・協議を開催しつつ,欧州の基礎的情報収集を更に進め,最終年度令和4年度では,限られたデータ内で,(1)日・欧州の政策形成過程上の差異,及び(2)その要因をACFの枠組みから定量的に切り取るべく計画した.しかし,令和4年2月発病の障害が予想以上のため,本研究を断念した.今後の研究上の課題は,ACFでの定量的分析の取り組みである.
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