研究課題/領域番号 |
17K01828
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
応用健康科学
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
犬飼 洋子 愛知医科大学, 医学部, 講師 (10308950)
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研究分担者 |
岩瀬 敏 愛知医科大学, 公私立大学の部局等, 客員教授 (90184879)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2019年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2018年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2017年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
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キーワード | 選択的脳冷却 / 味覚性発汗 / TRPV1 / TRPA1 / カプサイシン / カプシエイト / 辛味 / 痛み / ワサビ / 脳温 / 熱中症 / 発汗 / 辛味性発汗 / フィードフォワード(予測)的制御 |
研究実績の概要 |
本年度も新型コロナウイルス感染は蔓延、新たな変異株の発生は続き、ヒトを対象とする実験が危険な状態が続いている。よって本年度も一昨年度から引き続き、実験の準備・研究計画の検討等に留まった。 本研究では「Ⅰ.カプサイシン受容体TRPV1が選択的脳冷却をどの程度促進するか」を検討する前に、「Ⅱ. 辛味性発汗を引き起こすのはTRPV1に特異的か」を明確にすることが重要である。2019年度に「味覚(辛味)性発汗は、熱刺激受容体であるTRPV1活性化に特異的か、もしくは冷刺激受容体であるTRPA1活性化でも起こるか。」について、健常被験者1名(54歳女性)で、予備実験的に検討した。 [方法] TRPA1を活性化する成分として一味唐辛子、生姜、TRPA1を活性化する成分としてワサビの各々少量を、舐るまたは咀嚼することを、日を変えて3回行い、反応としての顔面・頭部の発汗出現の自覚を定性的に観察した。ワサビは本わさびと力強い辛みの西洋わさびとの混合製品である。 [結果]一味唐辛子を舐める、生姜を咀嚼した時は、それらの数秒後から顔面・頭部で著明な発汗が出現し、その後数秒間持続した。この反応は毎回みられた。一方、ワサビでも顔面・頭部に発汗が出現したが、それは3回中2回であった。また、舐めて比較的直後から、ツンとした嗅覚とともにであり、それは持続的ではなかった。 [考察] 一味唐辛子(TRPV1)、生姜(TRPV1)、ワサビ(TRPA1)の全てによって味覚性発汗は誘発されるが、その特徴すなわち程度、持続、頻度がTRPV1がTRPA1より大きいという自覚であった。味覚性発汗は、口腔内TRPV1活性化により特異的に起こるものと、痛み感覚によるものとの両方によるかもしれない。 今後の研究の展開に関する計画として、ワサビの製品には唐辛子が配合されているものもあり、純粋にワサビのみで確認する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1. 新型コロナウイルス感染拡大が、2020年度初期より続き、新たな変異株も次々に発生しており、未だヒトを対象とする実験が危険な状態が続いている。当該研究の実験は、人工気候室で室温設定するために「密閉」が必要であり、しかも被験者に験者(研究代表者)が測定器具の装着や前処置、実験処置をするため「密接」、「密集」が避けられない。さらに被験者口腔内に味覚物質を挿入し発汗反応を観察するゆえ、被験者はマスクができず口を開けてもらう必要があり、これらを合計2時間に渡って続けるため、ウイルスがもし陽性であれば感染リスクが非常に高い。よって、被験者を依頼できず、実験・研究を中断せざるをえない状態が続いている。 2. 学生を被験者として募集することは、当講座で従来行われてきたが、平成31年度に当学の倫理委員会で「当該研究を実施する研究者が担当する授業科目又は実習等の成績評価期間外でなければならない」との取り決めがなされたため、教員である研究代表者が被験者を募集できるのは、学生の春休み中に限定されてしまった。 3. 研究代表者の他の業務が多忙(学生の教育、国際学会での招待講演、多数の国内外の学会発表)であった。 4. 20年間使用してきた実験機器が故障した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染の恐れが無くなり次第、実験を再開したい。 本研究の申請当初、味覚刺激物質として、食品である唐辛子、生姜、本わさび、和からし(以上、辛味)、ショ糖(甘味)、塩(塩味)、インスタントコーヒー(苦味)、穀物酢(酸味)を予定していたが、濃度を明確にするために、濃度が明確かつ口腔内投与が安全な試薬を用いることにする。TRPV1、TRPA1物質の試薬は今後検索し、無ければ当初の方法で行う。その他の各味覚刺激物質は市販の試薬がある。 一昨年度の実験により、TRPV1のみでなくTRPA1活性化でも発汗する可能性が想定された。よって、味覚性発汗の誘発は、受容体の違いによるのか、痛みの有無によるのか、また発汗の性質はそれらにより異なるかの視点が必要である。よって各刺激による発汗の程度すなわち発汗開始時点、持続、範囲、頻度等を、ミノール法、サーモグラフィ、局所発汗量連続測定により詳細に検証する。とくにTRPV1は痛み、酸、43℃以上の熱のいずれでも活性化されるので、それぞれによる発汗反応の性質の違いに留意する。よって研究方法に、①温湯(TRPV1が最も活性化する48℃)を口に含んだ場合、②痛み刺激として“たわし”を口腔内に含んだ場合、を追加する。TRPA1を活性化する物質として炭酸水(Yuanyuan et al., 2010)を追加する。本研究は、口腔内の活性化箇所の検討でなく、また、刺激箇所による反応の不安定さを生じさせないように、全味覚物質による刺激方法を、全口腔法に変更する。結果により、「Ⅱ. 辛味性発汗を引き起こすのはTRV1に特異的か、もしくは痛みでも起こるか」の結論を導く。 同時に、「Ⅰ.カプサイシン受容体TRPV1が選択的脳冷却をどの程度促進するか」についての検証を、計画通り進める。
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