研究課題
基盤研究(C)
今年度は,最終年度に予定した地域住民調査による検討を行った.ライフヒストリーデータに基づいた幼少期の生活環境および高齢期の健康についての50項目からなる調査票を作成し,地域在宅の60歳以上984名から回答を得た.回答は4件法とし0~3の数値を付して分析した.同地域の一部対象者によるAWGS2019を用いたサルコペニア疑いも検討した.主な結果を以下に記す.・幼少期の生活環境の基本統計量では,天井効果(平均値+1SD以上)を“父/母は働き者であった(3.18,3.22)”,床効果(平均値-1SD以下)を“父/自分が病弱であった(-0.14,-0.08)”,“家庭内で遠慮があった(-0.18)”,“近所で差別を受けた(-0.26)”経験の項目に認めた.除外項目ながら,親がよく働いていたという認識は多くの高齢者に共通すること,ネガティブな経験は個人の体験としては印象深く語られるが,集団としては抽出されにくいことを確認した.回答には年齢差が見られ,特に家事や畑仕事の手伝いで“遊ぶ暇がなかった”などでは,「60~79歳」群に比べ「80歳以上」群でよりあてはまりが高かった.・高齢期の健康との関連では,“父/母は賢い人であった”,“友達とよく遊んだ”,“通学で足腰が鍛えられた”等の項目と,主観的幸福感および自覚的健康度に弱い有意な正の相関があった.最も強く関連した“近所の人に恵まれた”の年齢調整偏相関係数は,それぞれ0.19,0.13であった.・幼少期の生活環境を構成する要素を因子分析(主因子法,Promax回転)で検討した結果,3因子を抽出し,「身体活動の楽しさ」,「家事負担からの習得」,「親からの学び」と解釈した.各因子と主観的幸福感,自覚的健康度との関連では,「親からの学び」でこれらを有意に高める関係が認められた.・本地域の60~80歳の男女84名において「サルコペニア疑い」6~8%を確認した.
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