研究課題
基盤研究(C)
本研究では、母性行動の経験が母性記憶として脳内に保持されるメカニズムを、マウスを用いた実験により明らかにした。雌親が出産直後の数日間、仔と接触し、母性行動を繰り返し経験することにより、脳内報酬系におけるシナプス新生が起こることがわかった。仔との接触期間にタンパク合成阻害剤を脳内投与すると、報酬系におけるシナプス新生と母性記憶の形成が阻害された。また、海馬の長期可塑性現象の誘発に重要なCa2+透過型AMPA受容体も母性記憶形成に関与していることがわかり、海馬など他の脳部位で起こるシナプス可塑性現象と同様のメカニズムで母性記憶が形成されることが示唆された。
母性記憶という現象は、生得的(本能的)なものとして考えられてきた養育行動が経験により影響を受けることを示している。母性記憶の細胞基盤を明らかにした本研究成果により、適切な経験を繰り返すことで、未熟な母性行動を適切なものへと修正できる可能性を示すことができた。母性記憶形成の細胞メカニズムの解明は、具体的な修正方法への道筋をつけると期待される。
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