研究実績の概要 |
最終年度は研究成果の出版に向けて執筆に全力を傾注し, 科研費の残額はすべて出版費用に充てることを予定していた(そのため11月末のルナン学会出席にあたっても, 科研費からの渡航費用の支出は行わなかった)。一方で秋口より体調を崩し, 出版社への原稿提出が遅れた。渡仏の無理も影響して計画に支障をきたし, 年度末までに研究成果として単著を出版するにいたらなかった。その結果, 出版助成費用として未使用にしていた金額を返却した。原稿は提出済みで出版に向けての作業に入っていたため,出版社と協議のうえ刊行をめざして作業を進めている(仮題:『死刑廃止への一系譜―ユゴー, ジョレス, バダンテール』,国書刊行会から出版予定)。 研究期間全体としては, 文献の収集は社会学, キリスト教, 思想家・作家関連の図書・論文を書籍として購入する一方, パリフランス国立図書館での資料検索, さらにGallicaなどのサイトを通じて収集し利用した。国外の研究力者との提携についてはL.レタ氏(リヨン第二大学名誉教授), G.グランジュ氏(トゥール大学教授)などと面談して研究内容に反映した。国内ではキリスト教文学会, 国際表現学会,所属研究機関の紀要で発表および論文掲載を行った。国際ルナン学会での大会立案については,2018年の「ルナン学会五〇周年記念大会」で「ルナン作品の日本への導入―脱宗教化されたキリスト像と近代化黎明期の危機意識へのその投影」と題して発表を行い, 加筆・訂正のうえ2021年『ルナン研究』121号に掲載された。「諸宗教とライシテ」が「ルナン生誕二百周年記念大会」(2023年11月)のテーマとなった。その大会では「ルナンによる預言者:社会主義者の先祖なのか?―ジャン・ジョレスのコメントに照らしてー」と題して発表を行い, この発表は『ルナン研究』124号に掲載される予定である。
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