研究課題/領域番号 |
17K02608
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
ヨーロッパ文学
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研究機関 | 京都精華大学 |
研究代表者 |
西塔 由貴子 京都精華大学, 人文学部, 研究員 (60411948)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2018年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2017年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 色彩 / 輝き / 色彩感覚 / 認識 / sigaloeis / ホメロス / 紫(porphureos) / 葡萄酒色の海 / porphureos / 紫 / 共感覚 / 光と輝き / Argos / Marmareos / 海の色と輝き / 色彩表現の表象生 / 色と音 / 色彩感覚と認識論 / ホメロス叙事詩 / 色彩表現の表象性 / 認識論 / 共感覚(synaesthesia) / 紫(Purple) 、青(Blue)の多彩性 / 海 / 物語の創造性 / 色と輝き / 『イリアス』『オデュッセイア』 / 色彩とシンボル / 色彩表現とジェンダー / 共感覚(synaesthesia) / ホメロス / Homer / 色彩表現 / 表象 / イメージとシンボル / argos / ジェンダー / leukos / 西洋古典学 / 光 |
研究実績の概要 |
当該年度もオンラインと対面同時進行の授業形態に時間を要し、研究に集中する時間が限られたが、研究計画の推進に努め、停滞状態であった前年度よりは大きく前進できたのではないかと判断する。 1.『ホメロスと色彩』刊行:このような事態の中で単著を出版できたことは、出版社や周囲の方々のおかげである。研究内容のことだけでなく、執筆について多くのことを学ぶことができた。課題も山積するが、今後の研究につながる貴重な経験であった。 2. キプロスでの学会発表は3年ぶりに対面での学会参加となり、国際的に著名な研究者と話す機会もあり、非常に有意義であった。「和解とは」という感情論から倫理・道徳観にかかわる議論に参加したことで、研究の方向性に広がりが加わり、新しい着眼点の開知ともなった。 3. アテネ(British School of Athens/以下、BSAと略記)での研究も極めて有益であった。セミナー等参加、考古学専門の研究者と話し合い、次回ホメロスに関連する地の考古学調査への参加を見据えている。また、スケジュールさえ調整できれば BSA 主催のセミナーにて発表の機会がある。 4. 前年度から宙に浮いたままの論文も依然として残っているが提出済の Porphureos: Aspects of the Transformative Role of Bright Colour-Hues in Interior Space in Homer (Brepols) は査読済で、締切に向け現在改稿中である。輝きを意味する‘sigaloeis’に着目した論文も欧米の雑誌に投稿し、現在改稿中である。光には二面性があると言及した論文を執筆し、『文芸学研究』に投稿し掲載されたことは、ギリシア文学研究の存在を示すうえで有為であったと考える。 今年度得た成果と課題を踏まえ、次の研究課題に向けてさらに推進したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
単著に専念したため、新たな用語に関する分析考察は当該年度の後半からの再開となった。‘sigaloeis’の再確認ととにもに‘auge’‘aiolos’‘aithops’‘enarges’等々を調べ、どのような文脈で使用されているか考察を試みた。「輝き」を示す古代ギリシア語もほかに相当数あり、またその登場の仕方が多岐に渡り絡み合っているため、一定の見解を提示するにまで至っていない。精度の高い論を展開するため一つ一つ丁寧に調べていく必要性があると考える。 1. 授業のない期間という限られた期間内で国際学会での研究発表を目指し、一つの用語に特化して分析考察を試みた要旨を欧州の複数の学会に送ってみたが残念ながら受理されなかった。要旨の内容や考察の過程を再考する。 (2)外国人招聘講演会は、先方の研究者の異動・研究計画などの事情から、ほぼ中止の見通しである。一方、次の研究課題で招致を予定している研究者とは2021年に連絡済なので、漸次進める。 (3)2022年内に刊行予定の欧米雑誌に輝きの一側面を考察した論文を投稿した後全く連絡がなかったが、現在推敲中である。先方の対応に少々不安を感じつつも近い将来に形になるよう方途を探る。他にも前年度から連絡のない論文(修正・提出済)が残り、待っている状態である。進捗がなければ別の雑誌を探して寄稿する予定。 依然としてコロナ禍による授業形態や「配慮」のへの対応が研究に及ぼす影響が甚大な中で、単著が刊行できたことは大きな成果であった。引き続き新規申請の準備を継続するとともに、次年度はこの単著で学んだ経験と課題を踏まえ、「輝き」に関する語をまとめるため時間の確保に努めたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は基本全面対面授業になり、徐々に研究に費やす時間が確保しやすくなると期待している。現時点で考える推進方策は以下の通りである。 1. 次の単著に向けて「光」「輝き」を示す用語の析出・分析・考察を継続。併行して関連文献渉猟と精査、分析、考察した用語を整理。 2. 前述の査読・提出済の論文を修正・改稿し、より緻密な分析、精度の高い論を展開し、刊行する。未掲載の論文は推敲を重ねて別の雑誌または文献に投稿する。 3. BSAに向けた準備。海外を含む学会での発表を目指し、適切な「場」を探して発表の機会を得るよう努力する。 拙著(『ホメロスと色彩』京都大学学術出版会、2022)では、光は「色」なのか等、区別することに問いを投げかけた。この過程で得た知識や課題を踏まえて、光や輝きのあり方、その捉え方、さまざまな潜在性を秘めた光輝きと色との相関性について、範囲は限定的であるが総括し、次の研究課題へと継承する。前年度からの新規で掲げる予定としていた研究課題「葡萄酒色の海」(拙著所収)についてはさらに深く掘り下げて考察し、確度の高い知見を提示するべく、新規課題のメインテーマとしたい。昨年度に引き続き新規申請の準備を行う。研究環境は甚だ困難であるが、研究遂行のための時間確保に努め、研究に専心して成果を出したい。
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