研究課題/領域番号 |
17K02619
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
ヨーロッパ文学
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
吉田 孝夫 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (40340426)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2020年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2018年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2017年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 近世 / 温泉 / 湯治 / ルネサンス / ムルナー / グリンメルスハウゼン / 温泉誌 / 自然観 / キルヒャー / 医療 / ドイツ / シュヴェンクフェルト / シレジア / 独文学 / 民俗学 |
研究成果の概要 |
地底から湧出する鉱泉によって病気治療を行う湯治場は、近世ドイツにおいて、西欧古来の霊的な医学・自然観と、近代の自然科学・資本主義・リゾート開発とが拮抗する独特の空間を成していた。中世末の聖人伝、近世の奇譚集、16世紀のTh・ムルナー、17世紀のA・キルヒャー、グリンメルスハウゼンなどを主たる素材として、湯治場ないし温泉をめぐる近世ドイツ人の観念世界を通時的に概観し、近世特有の自然・宇宙観がもつ射程を考察することを目指した。その自然観には単なる物質性を超えた、独特な霊性の意識が見られ、また湯の源泉への言及は、個人・人間・歴史そのものの根源への意識を呼び覚ます仕掛けとなっている。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
ヨーロッパにおいては中世のペストの流行後に温泉文化が途絶えた、という通説が今なお世間に残っているが、それに対してドイツ研究の立場から修正を試み、近世もしくはルネサンス以後の野外の温泉文化の存在を明らかにした。またいわゆる魔女迫害の研究が独り歩きしている近世ヨーロッパ研究に対して、温泉の観点から時代特有の自然観を分析した。さらにこの研究は、ドイツと同じく長い温泉文化をもつ日本にとっても、社会の卑賤観(身分差別)と宗教的供養の関係、あるいは仏教民俗学的な他界観の観点、あるいは谷崎潤一郎『吉野葛』にも見られる、根源への意識としての温泉表象などとも有意義に共鳴し合うと思われる。
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